[レポート] AWS の徹底活用で ”守りの IT” から ”攻めの IT” そして “DX” へ。(CUS-26) #AWSSummit
コンバンハ、千葉(幸)です。
AWS Summit 2023 に2日間現地参加しました。4/20に行われた以下のセッションを聴講しましたので、セッションレポートをまとめます。
- 事例セッション(CUS-26)
- 「AWSの徹底活用で ”守りの IT” から ”攻めの IT” そして “DX” へ。」
なお、本セッションレポートはスピーカーの大野さまより掲載の了承を得て公開しています。
セッション概要
スピーカー:日本気象株式会社 大野 佳伸
日本気象では、お天気ナビゲータなどの個人向けサービスのクラウド移行、地震や台風時に起こるスパイクアクセスへの対応などにより、インフラコストを約50%削減、そこで生まれたリソースの余力を活用し新たなサービス開発を進めています。 本セッションではAWSのテクノロジーとスピーディな開発で、天気予報が外れると償金が当たる新しい天気サイト「FRAN」などのユニークなビジネスを、どのように創り出してきたかをご紹介します。
セッションレポート
会社の紹介
先に簡単な会社のご紹介がありました。
- 気象会社とは
- 気象庁長官の許可を受け、気象や海象などの予報を行う事業者
- 多くの予報士が勤務
- 24時間365日
- 主な取引先
- 官公庁、大学、研究機関
- 通信公共インフラ
- その他民間事業者
- 主な業務
- 予報の作成
- 国内外の専門機関や自社の観測機器データをもとに、自社の専門家が予報を作成
- 予報の販売
- お天気データサイエンスなどのサイト経由での販売
- 自社サービス上での情報提供
- toB、toCを問わない
- 観測・コンサルティング
- 洋上風力発電での観測機器設置、コンサルティングなど
- 監視・安全管理のサポート
- 工事現場や工場との直接やり取りも
- 教育事業
- 気象予報士の資格講座、学校・企業での講演
- 予報の作成
普段何気なく目にしている気象予報も、当たり前ですがそれを専門とする事業者さんがいらっしゃるんですね。
AWS利用からの学び
AWS利用の背景と期待
- AWS利用の背景
- お天気総合サイト「お天気ナビゲータ」などのサイトにてスパイクアクセスが発生
- 台風、地震などの発表時に平常時の10倍以上
- お天気総合サイト「お天気ナビゲータ」などのサイトにてスパイクアクセスが発生
- AWSへの期待と目的
- アクセススパイクへの対応
- サーバ維持管理にかかる運用負荷の軽減
- コスト削減
- 開発スピード向上
上記の期待をもとに、既存の個人向けサイトをデータセンターからAWSへ移行したとのこと。
期待通り狙いを即達成……とはならず。
基本的には既存のリソースをEC2インスタンスに置き換え、一定の効果はあったものの狙い通りには行かなかったとのことです。
- なぜ思うように成果が得られなかったのか
- DBをEC2上で展開し、テスト工数、運用負荷がオンプレと変わらず
- アクセス負荷の際に単純にサーバを増やすことでコスト増
- などなど
- 気づき
- オンプレ時代のデータセンター利用方法を踏襲しているために壁にぶつかっているのでは
- 対策
- クラウドを理解して使い倒す必要がある!
クラウド利用の最適化の取り組み
AWSサービスを理解して使い倒すこと、社内に浸透させることに注力されました。
- 社内の体制拡充
- 資格取得奨励制度
- 研修制度
- AWSからの後押し
- 認定資格
- 公式ハンズオン
- 最新情報提供
- AWSサポート
取り組みを経て、以下が実現できたとのことです。
- 「攻めのIT」人材の育成
- 自ら興味を持って学び積極的にスキルアップを続ける人材
- AWSのマネージド型サービスの活用本格化
取り組みの成果
- インフラコストが約50%削減
- サーバ管理の工数と運用負荷の軽減
- 機動的な構成によるスパイクへの柔軟な対応
- 開発スピードの向上
まずはマネージド型サービスファーストでAWSに任せられるものは任せ、「IT業務」ではなく本業の「気象ビジネス」に集中しよう、という方針があったとのこと。任せることで新しい機能やサービスを考える余地も生まれたそうです。大事なことですね。
AWS活用から生まれたサービス"FRAN"について
AWS活用を進める中で生まれたサービスがあるそうです。
- FRANとは
- 予報を外すとお金がもらえるというコンセプトで、正統派の気象予報とは一線を画す
- 正統派だけでは解決できない課題に対するアプローチ
- 予想精度は100%にはできない、外れた時の残念な思いに対するアプローチ
- AWSでの開発
- AWSのマネージド型サービスを最大活用
- 開発者1名で約3ヶ月で開発(!)
システムの構成はこんな感じ。(セッションの内容をもとに描きおこしてみました。)
AWSだからこそできた、余剰が生まれたことによってできた、とお話しされていました。
今後の展望とまとめ
- 社内で生まれたアイデアを素早く形にし、トライ&エラーを繰り返す
- 人・モノ・金の制約がある中小企業において、ビジネスにリソースを集中させ、トライ&エラーを行いやすいAWSはDXの一歩
- 日本気象はDX実現のために
- 「攻めのIT」人材が育つ環境
- AWSを学びビジネスに活かす”余力”を作り出す
- トライ&エラーを許容し、まずやってみる
終わりに
「AWSの徹底活用で ”守りの IT” から ”攻めの IT” そして “DX” へ。」のセッションレポートでした。
気象会社さん、という存在をきちんと意識したことがなかったので冒頭から新鮮に拝聴しました。社内リソースが潤沢ではない環境においては、任せられる部分はなるべくAWSに任せ本来のビジネスに注力する、というのは大事な観点だと感じます。同じようなシチュエーションの方も多いのではないでしょうか。
また、単にクラウドリフト(オンプレからそのままAWSに移行)するだけは不十分であり、クラウドシフト(クラウド利用の最適化)も必要である、というのを再認識しました。奇しくも当日の基調講演で同じ話がありましたので、まさに実例、ということで興味深く聞きました。
以上、 チバユキ (@batchicchi) がお送りしました。